知財高裁 平成21(ネ)10078号 パンドラTV事件 判決日:平成22年09月08日 (原審:東京地裁平成20年(ワ)第21902号)
・控訴棄却
・民法709条,著作権法2条,21条,23条,112条,114条の5,プロバイダ責任制限法2条,3条、複製権、公衆送信権、侵害行為の主体
・ジャストオンライン株式会社、X 対 社団法人日本音楽著作権協会
動画投稿・共有サイトを運営するジャストオンライン(株)((株)パンドラTV)は、同社が運営する動画投稿サイトのサーバに,ユーザが投稿した著作物の複製物を含む動画ファイルを蔵置し,これを各ユーザに送信していた。
一審原告の社団法人日本音楽著作権協会は、この行為が、当該協会の管理する管理著作物の著作権(複製権及び公衆送信権(送信可能化を含む。)を侵害し,かつ,不法行為が成立するとして訴えを提起した。
原審の東京地裁は,ジャストオンラインが本件サービスを管理支配している主体であり,当該サービスによる著作権侵害行為を支配管理できる地位にありながら著作権侵害行為を誘引,招来,拡大させてこれにより利得を得る者であって,侵害行為を直接に行う者と同視できるとして、差止・損害賠償請求を認める判決をした。
本件は、この原判決に不服のジャストオンライン(株)が知財高裁に控訴した事件である。
主な争点は、下記の通りである。
①争点1(控訴人は侵害行為の主体か)
②争点2(プロバイダ責任制限法3条の「発信者」に該当するか否か)
①争点1(控訴人は侵害行為の主体か)について
原審では、著作権法上の侵害主体の当否について、「当該侵害行為を物理的,外形的な観点のみから見るべきではなく,・・・実態に即して,著作権を侵害する主体として責任を負わせるべき者と評価することができるか否かを法律的な観点から検討すべきである。」としている。「そして,この検討に当たっては,問題とされる行為の内容・性質,侵害の過程における支配管理の程度,当該行為により生じた利益の帰属等の諸点を総合考慮し,侵害主体と目されるべき者が自らコントロール可能な行為により当該侵害結果を招来させてそこから利得を得た者として,侵害行為を直接に行う者と同視できるか否かとの点から判断すべきである。」としていた。
本件控訴においても、これらの点から侵害行為の主体の当否が判断されている。 その上で、以下の点を指摘している。
・本件サービスが,本来的に著作権を侵害する蓋然性の極めて高いサービスであること
・控訴人会社は,このような本件サービスのシステムを開発して維持管理し,運営することにより,同サービスを管理支配していること
・控訴人会社は,無償で動画ファイルを入手する一方で,これを本件サーバに蔵置し,送信可能化することで同サーバにアクセスするユーザに閲覧の機会を提供する本件サービスを運営することにより,広告収入等の利益を得ていること
・本件サイトにおける著作権侵害の蓋然性は、控訴人会社も予想することができ、現実に認識していたにもかかわらず,控訴人会社は著作権を侵害する動画ファイルの回避措置及び削除措置についても何ら有効な手段を採っていないこと
その結果、控訴人は、「本件サービスを提供し,それにより経済的利益を得るために,その支配管理する本件サイトにおいて,ユーザの複製行為を誘引し,実際に本件サーバに本件管理著作物の複製権を侵害する動画が多数投稿されることを認識しながら,侵害防止措置を講じることなくこれを容認し,蔵置する行為は,ユーザによる複製行為を利用して,自ら複製行為を行った」として、侵害行為の主体であると判断した。
②争点2(プロバイダ責任制限法3条の「発信者」に該当するか否か)について
プロバイダ責任制限法3条1項は,以下の通りである。
「特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害されたときは,当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下この項において「関係役務提供者」という。)は,これによって生じた損害については,権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合であって,次の各号のいずれかに該当するときでなければ,賠償の責めに任じない。ただし,当該関係役務提供者が当該権利を侵害した情報の発信者である場合は,この限りでない。」
プロバイダが不法行為に基づく損害賠償責任を負うに当たっては,技術的可能性,並びに権利侵害の認識,又は流通の認識及び権利侵害の認識可能性を満たす必要がある。しかし、発信者に該当する場合には、これらの要件を要求されず,不法行為の要件を満たせば足りる。
ここで、発信者については、同法2条4号において、以下の通り規定されている。
「特定電気通信役務提供者の用いる特定電気通信設備の記録媒体(当該記録媒体に記録された情報が不特定の者に送信されるものに限る。)に情報を記録し,又は当該特定電気通信設備の送信装置(当該送信装置に入力された情報が不特定の者に送信されるものに限る。)に情報を入力した者をいう。」
本件に於いては、ユーザの投稿により提供された情報(動画)を,「電気通信役務提供者の用いる特定電気通信設備の記憶媒体又は当該特定電気通信設備の送信装置」に該当する本件サーバに,「記録又は入力した」ものと評価することができるとして、控訴人は「発信者」に該当すると判断した。
(判決文) http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100909131245.pdf
知財高裁 平成21(ネ)10078号 パンドラTV事件 判決日:平成22年09月08日 (原審:東京地裁平成20年(ワ)第21902号)
・控訴棄却
・民法709条,著作権法2条,21条,23条,112条,114条の5,プロバイダ責任制限法2条,3条、複製権、公衆送信権、侵害行為の主体
・ジャストオンライン株式会社、X 対 社団法人日本音楽著作権協会
動画投稿・共有サイトを運営するジャストオンライン(株)((株)パンドラTV)は、同社が運営する動画投稿サイトのサーバに,ユーザが投稿した著作物の複製物を含む動画ファイルを蔵置し,これを各ユーザに送信していた。
一審原告の社団法人日本音楽著作権協会は、この行為が、当該協会の管理する管理著作物の著作権(複製権及び公衆送信権(送信可能化を含む。)を侵害し,かつ,不法行為が成立するとして訴えを提起した。
原審の東京地裁は,ジャストオンラインが本件サービスを管理支配している主体であり,当該サービスによる著作権侵害行為を支配管理できる地位にありながら著作権侵害行為を誘引,招来,拡大させてこれにより利得を得る者であって,侵害行為を直接に行う者と同視できるとして、差止・損害賠償請求を認める判決をした。
本件は、この原判決に不服のジャストオンライン(株)が知財高裁に控訴した事件である。
主な争点は、下記の通りである。
①争点1(控訴人は侵害行為の主体か)
②争点2(プロバイダ責任制限法3条の「発信者」に該当するか否か)
①争点1(控訴人は侵害行為の主体か)について
原審では、著作権法上の侵害主体の当否について、「当該侵害行為を物理的,外形的な観点のみから見るべきではなく,・・・実態に即して,著作権を侵害する主体として責任を負わせるべき者と評価することができるか否かを法律的な観点から検討すべきである。」としている。「そして,この検討に当たっては,問題とされる行為の内容・性質,侵害の過程における支配管理の程度,当該行為により生じた利益の帰属等の諸点を総合考慮し,侵害主体と目されるべき者が自らコントロール可能な行為により当該侵害結果を招来させてそこから利得を得た者として,侵害行為を直接に行う者と同視できるか否かとの点から判断すべきである。」としていた。
本件控訴においても、これらの点から侵害行為の主体の当否が判断されている。 その上で、以下の点を指摘している。
・本件サービスが,本来的に著作権を侵害する蓋然性の極めて高いサービスであること
・控訴人会社は,このような本件サービスのシステムを開発して維持管理し,運営することにより,同サービスを管理支配していること
・控訴人会社は,無償で動画ファイルを入手する一方で,これを本件サーバに蔵置し,送信可能化することで同サーバにアクセスするユーザに閲覧の機会を提供する本件サービスを運営することにより,広告収入等の利益を得ていること
・本件サイトにおける著作権侵害の蓋然性は、控訴人会社も予想することができ、現実に認識していたにもかかわらず,控訴人会社は著作権を侵害する動画ファイルの回避措置及び削除措置についても何ら有効な手段を採っていないこと
その結果、控訴人は、「本件サービスを提供し,それにより経済的利益を得るために,その支配管理する本件サイトにおいて,ユーザの複製行為を誘引し,実際に本件サーバに本件管理著作物の複製権を侵害する動画が多数投稿されることを認識しながら,侵害防止措置を講じることなくこれを容認し,蔵置する行為は,ユーザによる複製行為を利用して,自ら複製行為を行った」として、侵害行為の主体であると判断した。
②争点2(プロバイダ責任制限法3条の「発信者」に該当するか否か)について
プロバイダ責任制限法3条1項は,以下の通りである。
「特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害されたときは,当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下この項において「関係役務提供者」という。)は,これによって生じた損害については,権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合であって,次の各号のいずれかに該当するときでなければ,賠償の責めに任じない。ただし,当該関係役務提供者が当該権利を侵害した情報の発信者である場合は,この限りでない。」
プロバイダが不法行為に基づく損害賠償責任を負うに当たっては,技術的可能性,並びに権利侵害の認識,又は流通の認識及び権利侵害の認識可能性を満たす必要がある。しかし、発信者に該当する場合には、これらの要件を要求されず,不法行為の要件を満たせば足りる。
ここで、発信者については、同法2条4号において、以下の通り規定されている。
「特定電気通信役務提供者の用いる特定電気通信設備の記録媒体(当該記録媒体に記録された情報が不特定の者に送信されるものに限る。)に情報を記録し,又は当該特定電気通信設備の送信装置(当該送信装置に入力された情報が不特定の者に送信されるものに限る。)に情報を入力した者をいう。」
本件に於いては、ユーザの投稿により提供された情報(動画)を,「電気通信役務提供者の用いる特定電気通信設備の記憶媒体又は当該特定電気通信設備の送信装置」に該当する本件サーバに,「記録又は入力した」ものと評価することができるとして、控訴人は「発信者」に該当すると判断した。
(判決文) http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100909131245.pdf