平成21(行ケ)10421号 ガス式燃焼システムおよびその使用法事件 判決日:平成22年10月25日
・請求棄却
・特許法29条2項、一致点の認定の誤り、不純物、技術的意義
・ジュピターオキシジェンコーポレーション 対 特許庁長官
本願発明は、下記の通りである。
【請求項1】
少なくとも1つのバーナを有し、空気の侵入を実質的に防止するように構成され、水が入ったチューブが電気を発生させるスチームを発生する燃焼反応領域を有するように設計された炉と、
純度が少なくとも85%である酸素を供給する酸素供給源と、
炭素系燃料を供給する炭素系燃料供給源と、
前記酸素または前記炭素系燃料のいずれかの化学量論比に対する余剰分を5%未満に抑えるように調整する制御装置を有する制御システムとを備え、
前記炭素系燃料および前記酸素の燃焼によって4500°Fを超える火炎温度を形成し、前記炉からの排気流は、温度が1100°F以下である酸素供給式燃焼システム。
引用発明は、酸化剤と燃料とを燃焼させる燃焼システムに関する発明であって、従来技術では酸化剤として空気を供給するため、バーナで燃焼した後にNOxが発生するなどの問題があるのに対し、引用発明では、燃料に純酸素を供給することで、バーナで燃焼した後にNOxを発生させないなどとするものである。
審決は、当該引用発明および周知技術に基づき、本願発明は容易想到であるとして拒絶審決をした。
本件訴訟に於いて、原告は、審決が、引用発明の「酸素」は本願発明1の「純度が少なくとも85%である酸素」に相当するとした上、「純度が少なくとも85%である酸素」を一致点として認定したのは誤りであると主張した。
この主張に対し、知財高裁は、本願発明1における酸化剤は、「純度が少なくとも85%である酸素」であって、15%までの不純物が含まれ得るという点で引用発明の酸素(純酸素)と一致しない場合があり得るとしながらも、本願発明の技術的課題および明細書の記載を参酌して、本願発明1は、基本的に、窒素の含まれない、純度の高い酸素を用いることを課題解決の手段とする発明であると指摘。
本願発明は、15%までの不純物を含み得るとの視点においての技術的意義はなく、若干の不純物であれば許容されるものとして数値範囲を定めたにすぎないものと解されると判示した。
更に、引用発明についても、従来技術の空気を供給するバーナに代えて純酸素バーナを用いることでNOxの発生を阻止するというものであって、窒素を含まない酸素を用いることを解決手段とするものであるから、解決課題とこれに対する手段は本願発明と同じであると認定した。 その結果、課題解決のための技術的意義の視点からみて、本願発明の「純度が少なくとも85%である酸素」は引用発明の「酸素」と一致し、審決の認定に誤りはないと判断した。
不可避的に混入される不純物の技術的意義をどの様に捉え、明細書に記載するかは慎重を要する。一定程度の不純物の含有を許容した点に引用発明との差異があるというのであれば、その技術的意義をどの様に記載するかは重要な問題となる。
一方、権利行使の段階に於いても、不純物の存否により、特許発明の技術的範囲に含まれるか否かで問題となる場合がある。単に不純物として記載するのか、あるいは第三成分として記載した方がよいのか、事案毎に検討が必要である。
(判決文) http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20101026103313.pdf
平成21(行ケ)10421号 ガス式燃焼システムおよびその使用法事件 判決日:平成22年10月25日
・請求棄却
・特許法29条2項、一致点の認定の誤り、不純物、技術的意義
・ジュピターオキシジェンコーポレーション 対 特許庁長官
本願発明は、下記の通りである。
【請求項1】
少なくとも1つのバーナを有し、空気の侵入を実質的に防止するように構成され、水が入ったチューブが電気を発生させるスチームを発生する燃焼反応領域を有するように設計された炉と、
純度が少なくとも85%である酸素を供給する酸素供給源と、
炭素系燃料を供給する炭素系燃料供給源と、
前記酸素または前記炭素系燃料のいずれかの化学量論比に対する余剰分を5%未満に抑えるように調整する制御装置を有する制御システムとを備え、
前記炭素系燃料および前記酸素の燃焼によって4500°Fを超える火炎温度を形成し、前記炉からの排気流は、温度が1100°F以下である酸素供給式燃焼システム。
引用発明は、酸化剤と燃料とを燃焼させる燃焼システムに関する発明であって、従来技術では酸化剤として空気を供給するため、バーナで燃焼した後にNOxが発生するなどの問題があるのに対し、引用発明では、燃料に純酸素を供給することで、バーナで燃焼した後にNOxを発生させないなどとするものである。
審決は、当該引用発明および周知技術に基づき、本願発明は容易想到であるとして拒絶審決をした。
本件訴訟に於いて、原告は、審決が、引用発明の「酸素」は本願発明1の「純度が少なくとも85%である酸素」に相当するとした上、「純度が少なくとも85%である酸素」を一致点として認定したのは誤りであると主張した。
この主張に対し、知財高裁は、本願発明1における酸化剤は、「純度が少なくとも85%である酸素」であって、15%までの不純物が含まれ得るという点で引用発明の酸素(純酸素)と一致しない場合があり得るとしながらも、本願発明の技術的課題および明細書の記載を参酌して、本願発明1は、基本的に、窒素の含まれない、純度の高い酸素を用いることを課題解決の手段とする発明であると指摘。
本願発明は、15%までの不純物を含み得るとの視点においての技術的意義はなく、若干の不純物であれば許容されるものとして数値範囲を定めたにすぎないものと解されると判示した。
更に、引用発明についても、従来技術の空気を供給するバーナに代えて純酸素バーナを用いることでNOxの発生を阻止するというものであって、窒素を含まない酸素を用いることを解決手段とするものであるから、解決課題とこれに対する手段は本願発明と同じであると認定した。 その結果、課題解決のための技術的意義の視点からみて、本願発明の「純度が少なくとも85%である酸素」は引用発明の「酸素」と一致し、審決の認定に誤りはないと判断した。
不可避的に混入される不純物の技術的意義をどの様に捉え、明細書に記載するかは慎重を要する。一定程度の不純物の含有を許容した点に引用発明との差異があるというのであれば、その技術的意義をどの様に記載するかは重要な問題となる。
一方、権利行使の段階に於いても、不純物の存否により、特許発明の技術的範囲に含まれるか否かで問題となる場合がある。単に不純物として記載するのか、あるいは第三成分として記載した方がよいのか、事案毎に検討が必要である。
(判決文) http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20101026103313.pdf