知財高裁平成23年11月30日判決 平成23(行ケ)10159 コンタクトレンズ事件
・請求認容
・原告 X 対 特許庁長官
・意匠法3条1項3号、類似
(経緯)
原告は、下記の意匠(本願意匠)について、意匠に係る物品を「コンタクトレンズ」として意匠登録出願(意願2009-015557)をしたが、審査において拒絶査定を受け、その不服審判においても意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当するとして拒絶審決を受けた。
本件は、その拒絶審決に不服の原告がその取消しを求めて知財高裁に訴えを提起したものである。
(本願意匠及び引用意匠)
本願意匠及び引用意匠は下記の通りである。
(争点)
本願発明と引用意匠とは類似するか。
(裁判所の判断)
先ず、知財高裁は、本願意匠及び引用意匠について、それぞれ模様及び彩色が施された「コンタクトレンズ」に係る意匠であって、全体の形状は、球面体の一部を平面によって切り取った透光性を有する曲面体であり、同意匠の中心に位置する「小円形状部」と「最外周部」とを除外した部分は、中央を中心とする3つの同心円状の部分に分けられ、さらに当該部分は中央を中心として「外周部」、「内周部」、「内周縁部」の3つの同心円状の部分に分けられる、とした。
また、本願意匠及び引用意匠に係る物品については、「模様及び彩色が施された「コンタクトレンズ」であるが、同物品は、視力の矯正などの医療上の目的ではなく、虹彩部ないし瞳孔部の外観を変化させる美容上の目的で、使用されるものと解される。」とした。
その上で、本願発明と引用意匠との類否については、以下の通り判断した。
・「内周部」及び「内周縁部」について
本願意匠における「内周部」及び「内周縁部」は、全体的に淡い灰色に配色された下地に、濃黒色及び灰色に着色され、内周部から中心に向かって収束する方向に延伸する「棒状形状」(各棒形状は、太さ、長さが一様ではなく、また、やや曲がっているものもみられる。)が描かれており、「棒状形状」が連結するように描かれている。従って、本願意匠は、看者に対して、ヒトの目との比較において、より自然で調和的、かつ穏やかな印象を与えるような美感を有するものと評価できる。
これに対して、引用意匠における「内周部」及び「内周縁部」は、規則正しく配置された小円の集合により構成されており、山形形状部等の全体の模様は、小円の大きさ、濃淡及び配置の相違のみによって表現され、山形形状部の高さ等が均一的、画一的である。従って、引用意匠は、看者に対して、ヒトの目との比較において、自然らしさを捨象し、人工的、メカニカルな印象を与えるような美感を有するものと評価できる。
・その他の部分について
本願意匠と引用意匠とは、①全体が球面体の一部を平面によって切り取った透光性を有する曲面体であること、②曲面体の中心点を囲む「中央円形部」を有すること、③外周部がほぼ黒色で配色されること等において、共通するが、これらの共通点は、ヒトの目に装着するカラーコンタクトレンズとして、全体が球面体の一部を平面によって切り取った透光性を有する曲面体であり、中央円形部を有することは、必然的に選択される形状であり、コンタクトレンズを、虹彩部ないし瞳孔部の外観を変え、大きく際だたせる目的で使用する場合に、外周部がほぼ黒色で配色されることは、必然的に選択される形状である。従って、上記の共通の形状は、意匠の対比に当たり、重要な特徴部分であるとはいえない。
以上より、知財高裁は、本願意匠は引用意匠に類似しないとして、拒絶審決の判断は誤りであると判断した。
(判決文) http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20111201140318.pdf
知財高裁平成23年11月30日判決 平成23(行ケ)10159 コンタクトレンズ事件
・請求認容
・原告 X 対 特許庁長官
・意匠法3条1項3号、類似
(経緯)
原告は、下記の意匠(本願意匠)について、意匠に係る物品を「コンタクトレンズ」として意匠登録出願(意願2009-015557)をしたが、審査において拒絶査定を受け、その不服審判においても意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当するとして拒絶審決を受けた。
本件は、その拒絶審決に不服の原告がその取消しを求めて知財高裁に訴えを提起したものである。
(本願意匠及び引用意匠)
本願意匠及び引用意匠は下記の通りである。
(争点)
本願発明と引用意匠とは類似するか。
(裁判所の判断)
先ず、知財高裁は、本願意匠及び引用意匠について、それぞれ模様及び彩色が施された「コンタクトレンズ」に係る意匠であって、全体の形状は、球面体の一部を平面によって切り取った透光性を有する曲面体であり、同意匠の中心に位置する「小円形状部」と「最外周部」とを除外した部分は、中央を中心とする3つの同心円状の部分に分けられ、さらに当該部分は中央を中心として「外周部」、「内周部」、「内周縁部」の3つの同心円状の部分に分けられる、とした。
また、本願意匠及び引用意匠に係る物品については、「模様及び彩色が施された「コンタクトレンズ」であるが、同物品は、視力の矯正などの医療上の目的ではなく、虹彩部ないし瞳孔部の外観を変化させる美容上の目的で、使用されるものと解される。」とした。
その上で、本願発明と引用意匠との類否については、以下の通り判断した。
・「内周部」及び「内周縁部」について
本願意匠における「内周部」及び「内周縁部」は、全体的に淡い灰色に配色された下地に、濃黒色及び灰色に着色され、内周部から中心に向かって収束する方向に延伸する「棒状形状」(各棒形状は、太さ、長さが一様ではなく、また、やや曲がっているものもみられる。)が描かれており、「棒状形状」が連結するように描かれている。従って、本願意匠は、看者に対して、ヒトの目との比較において、より自然で調和的、かつ穏やかな印象を与えるような美感を有するものと評価できる。
これに対して、引用意匠における「内周部」及び「内周縁部」は、規則正しく配置された小円の集合により構成されており、山形形状部等の全体の模様は、小円の大きさ、濃淡及び配置の相違のみによって表現され、山形形状部の高さ等が均一的、画一的である。従って、引用意匠は、看者に対して、ヒトの目との比較において、自然らしさを捨象し、人工的、メカニカルな印象を与えるような美感を有するものと評価できる。
・その他の部分について
本願意匠と引用意匠とは、①全体が球面体の一部を平面によって切り取った透光性を有する曲面体であること、②曲面体の中心点を囲む「中央円形部」を有すること、③外周部がほぼ黒色で配色されること等において、共通するが、これらの共通点は、ヒトの目に装着するカラーコンタクトレンズとして、全体が球面体の一部を平面によって切り取った透光性を有する曲面体であり、中央円形部を有することは、必然的に選択される形状であり、コンタクトレンズを、虹彩部ないし瞳孔部の外観を変え、大きく際だたせる目的で使用する場合に、外周部がほぼ黒色で配色されることは、必然的に選択される形状である。従って、上記の共通の形状は、意匠の対比に当たり、重要な特徴部分であるとはいえない。
以上より、知財高裁は、本願意匠は引用意匠に類似しないとして、拒絶審決の判断は誤りであると判断した。
(判決文) http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20111201140318.pdf