知財高裁平成24年10月30日判決 平成24(行ケ)10125号 DAIWA事件
・請求認容
・大和建工材株式会社 対 特許庁長官
・商標法4条1項6号
(経緯)
原告の大和建工材株式会社は、下記商標について商標登録出願をしたところ、拒絶査定を受けたので、不服の審判請求をした。
しかし、特許庁は、商標法4条1項6号に該当するとして請求不成立審決をした。本件は、これに不服の原告が知財高裁にその取消を求めて訴えを提起したものである。
(本願商標)
本願商標は、以下の通りである。
(審決)
本願商標が、著名な宮崎県日南市の市章(下記参照)と類似の商標であるから、商標法4条1項6号に該当する、というものである。
(裁判所の判断)
・日南市章の著名性について
審決は、日南市章が、「公的な機関である地方自治体を表彰するために用いられる都道府県、市町村の章は、制定時に告示が行われるものであり、そして、告示は、広く一般に知らしめるものであることから、商標法第4条第1項第6号にいう「著名なもの」として扱うのが相当である」と判断した。
これに対し裁判所は、「告示されたことのみを理由として「著名なもの」とした審決の判断手法は、是認することができない。」とした。
また、日南市章が、日南市の公共施設やホームページ等に表示されたことや、イベント等を報じる新聞記事の写真、テレビ放送等に写ることも、本願商標の指定商品の取引者、需要者が一般に目にするとは認められないとした。
その結果、審決時に於いて、日南市章が本願商標の指定商品に係る一商圏以上の範囲の取引者、需要者に広く認識されていたと認めることは、困難であると判断した。
・本願商標と日南市章の類否について
先ず裁判所は、本願商標の図形部分が日南市章と類似していると認定した。しかし、同時に、当該図形部分は、「日」という漢字の古代書体に由来する日本銀行の行章と類似していることや、光が上下左右に4本伸びた構成が日立製作所の社章でもよく知られているとも指摘した。
そのため、「本願商標の図形部分は、本願商標の大きな部分を占めるものではあるが、「日」という漢字の古代書体に由来するありふれた図形であって、その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとまでは認められない。」と判断した。
他方、本願商標の「DAIWA」の文字部分については、取引者、需要者が企業名に関する表示として認識し、同部分からそのような企業名としての観念を生ずるとした。そのため、「本願商標の「DAIWA」の文字部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認めることはできない。」と判断した。
これにより、本願商標については、図形部分を抽出し、この部分だけを日南市章と比較して商標そのものの類否を判断することは許されないとした。
そして、「本願商標と日南市章を全体として対比すると、外観において本願商標の図形部分と日南市章は類似するものの、本願商標が「ダイワ」の称呼を生じ、「ダイワ」ないし「大和」の企業名としての観念を生じるのに対し、日南市章は、特定の称呼、観念を生じるものとは認められないから、全体として類似するとはいえない。」とした。
(判決文) http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20121106114540.pdf
知財高裁平成24年10月30日判決 平成24(行ケ)10125号 DAIWA事件
・請求認容
・大和建工材株式会社 対 特許庁長官
・商標法4条1項6号
(経緯)
原告の大和建工材株式会社は、下記商標について商標登録出願をしたところ、拒絶査定を受けたので、不服の審判請求をした。
しかし、特許庁は、商標法4条1項6号に該当するとして請求不成立審決をした。本件は、これに不服の原告が知財高裁にその取消を求めて訴えを提起したものである。
(本願商標)
本願商標は、以下の通りである。
(審決)
本願商標が、著名な宮崎県日南市の市章(下記参照)と類似の商標であるから、商標法4条1項6号に該当する、というものである。
(裁判所の判断)
・日南市章の著名性について
審決は、日南市章が、「公的な機関である地方自治体を表彰するために用いられる都道府県、市町村の章は、制定時に告示が行われるものであり、そして、告示は、広く一般に知らしめるものであることから、商標法第4条第1項第6号にいう「著名なもの」として扱うのが相当である」と判断した。
これに対し裁判所は、「告示されたことのみを理由として「著名なもの」とした審決の判断手法は、是認することができない。」とした。
また、日南市章が、日南市の公共施設やホームページ等に表示されたことや、イベント等を報じる新聞記事の写真、テレビ放送等に写ることも、本願商標の指定商品の取引者、需要者が一般に目にするとは認められないとした。
その結果、審決時に於いて、日南市章が本願商標の指定商品に係る一商圏以上の範囲の取引者、需要者に広く認識されていたと認めることは、困難であると判断した。
・本願商標と日南市章の類否について
先ず裁判所は、本願商標の図形部分が日南市章と類似していると認定した。しかし、同時に、当該図形部分は、「日」という漢字の古代書体に由来する日本銀行の行章と類似していることや、光が上下左右に4本伸びた構成が日立製作所の社章でもよく知られているとも指摘した。
そのため、「本願商標の図形部分は、本願商標の大きな部分を占めるものではあるが、「日」という漢字の古代書体に由来するありふれた図形であって、その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとまでは認められない。」と判断した。
他方、本願商標の「DAIWA」の文字部分については、取引者、需要者が企業名に関する表示として認識し、同部分からそのような企業名としての観念を生ずるとした。そのため、「本願商標の「DAIWA」の文字部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認めることはできない。」と判断した。
これにより、本願商標については、図形部分を抽出し、この部分だけを日南市章と比較して商標そのものの類否を判断することは許されないとした。
そして、「本願商標と日南市章を全体として対比すると、外観において本願商標の図形部分と日南市章は類似するものの、本願商標が「ダイワ」の称呼を生じ、「ダイワ」ないし「大和」の企業名としての観念を生じるのに対し、日南市章は、特定の称呼、観念を生じるものとは認められないから、全体として類似するとはいえない。」とした。
(判決文) http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20121106114540.pdf