東京地裁平成23年02月25日判決 平成21(ワ)31686 美顔パック事件
・請求棄却
・夢らく商事株式会社 対 株式会社箔一
・不正競争防止法2条1項1号、3号、不正競争、商品形態、商品等表示、周知性、誤認混同
(経緯)
原告の夢らく商事株式会社は,平成18年12月末ないし平成19年1月頃から,下記原告商品(商品名「KINPAK」として販売する金箔を素材とした美顔パック)を販売していた。
一方、被告の株式会社箔一は,遅くとも平成19年12月頃から,下記被告商品を製造販売していたところ、被告のこの行為は、不正競争防止法2条1項1号および3号の不正競争に該当するとして、東京地裁に訴えを提起した。
(争点)
主な争点は、以下の通りである。
(1) 被告は被告商品1を製造販売したか(争点1)
(2) 不競法2条1項1号の不正競争の成否(争点2)
ア原告商品の形態は周知の商品等表示といえるか(争点2-①)
(3) 不競法2条1項3号の不正競争の成否(争点3)
イ原告商品の形態は不競法2条1項3号で保護される形態といえるか(争点3-②)
(裁判所の判断)
上記の各争点のうち、争点2-①の原告商品の形態は周知の商品等表示といえるかについては、裁判所は以下の通り判断した。
即ち、先ず、商品形態の周知性の獲得について、「商品等表示に該当する商品形態が長年使用され又は強力に広告宣伝等がされたことにより,商品等表示として周知性を獲得した場合には,当該商品形態は同号による保護を受けることができるが,他方,当該商品形態が他の同種商品と比べてありふれたものである場合には,長年使用され又は強力に宣伝広告等がされたとしても,商品等表示として周知性を獲得することはできない。」と判示した。
その上で本件については、原告商品の形態上の各特徴点が、他の同種商品と識別し得るだけの形態的特徴であるとは認められず、かつ,その商品形態が強力に宣伝広告等され,あるいはマスメディア等に繰り返し露出したとまでは認められないとして、原告商品の商品形態の周知性を否定した。
また、争点3-②の原告商品の形態は不競法2条1項3号で保護される形態といえるかについては、先ず、不競法2条1項3号の「商品形態」は、同種の商品の基本的な機能や効用を果たすために不可欠な形態を除外したものと解するのが相当であると判示した。
「不競法2条1項3号は,他人の商品の形態を模倣した商品の譲渡行為等を不正競争とする一方,その括弧書きにおいて,当該商品の機能を確保するために不可欠な形態については同号による保護から除外される旨を規定する。これは,商品としての機能及び効用を果たすために不可避的に採用しなければならない商品形態を特定の者に独占させることは,商品の形態ではなく,同一の機能及び効用を有するその種の商品そのものの独占を招来することとなり,事業者間の自由な競争を阻害することになりかねないため,同種の商品の基本的な機能や効用を果たすために不可欠な形態については,同号の「商品の形態」から除外したものと解するのが相当である。」
その上で、本件については、原告商品の形態のうちの「ほぼ人の顔の大きさの丸みを帯びた四角形状」及び「目と口の部分を横長楕円型にくり抜き鼻の輪郭に沿って切れ込みを入れ」は,同種の商品の基本的な機能や効果を果たすために不可欠な形態であり、「金箔」もパックの素材として「金箔」を選択したという機能及び効用に関わる事項であり、従来からパックに使用されていたものであるから、いずれも不競法2条1項3号の「商品の形態」ということはできないと判断した。
原告は,原告商品が特徴的な色彩,光沢及び質感を有していることも「商品の形態」であると主張したが,裁判所は、「素材として金箔を採用したことによる金箔独特の色彩,光沢及び質感をいうものにすぎず,素材として金箔を採用すること自体はパック素材の選択という商品の機能及び効用に関わる事項であり,素材として金箔を採用すれば不可避的に金箔独特の色彩,光沢及び質感を有することになるから,これらの点も不競法2条1項3号による保護から除外されるというべきである。」と判示した。
(判決文) http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110301164525.pdf
東京地裁平成23年02月25日判決 平成21(ワ)31686 美顔パック事件
・請求棄却
・夢らく商事株式会社 対 株式会社箔一
・不正競争防止法2条1項1号、3号、不正競争、商品形態、商品等表示、周知性、誤認混同
(経緯)
原告の夢らく商事株式会社は,平成18年12月末ないし平成19年1月頃から,下記原告商品(商品名「KINPAK」として販売する金箔を素材とした美顔パック)を販売していた。
一方、被告の株式会社箔一は,遅くとも平成19年12月頃から,下記被告商品を製造販売していたところ、被告のこの行為は、不正競争防止法2条1項1号および3号の不正競争に該当するとして、東京地裁に訴えを提起した。
(争点)
主な争点は、以下の通りである。
(1) 被告は被告商品1を製造販売したか(争点1)
(2) 不競法2条1項1号の不正競争の成否(争点2)
ア原告商品の形態は周知の商品等表示といえるか(争点2-①)
(3) 不競法2条1項3号の不正競争の成否(争点3)
イ原告商品の形態は不競法2条1項3号で保護される形態といえるか(争点3-②)
(裁判所の判断)
上記の各争点のうち、争点2-①の原告商品の形態は周知の商品等表示といえるかについては、裁判所は以下の通り判断した。
即ち、先ず、商品形態の周知性の獲得について、「商品等表示に該当する商品形態が長年使用され又は強力に広告宣伝等がされたことにより,商品等表示として周知性を獲得した場合には,当該商品形態は同号による保護を受けることができるが,他方,当該商品形態が他の同種商品と比べてありふれたものである場合には,長年使用され又は強力に宣伝広告等がされたとしても,商品等表示として周知性を獲得することはできない。」と判示した。
その上で本件については、原告商品の形態上の各特徴点が、他の同種商品と識別し得るだけの形態的特徴であるとは認められず、かつ,その商品形態が強力に宣伝広告等され,あるいはマスメディア等に繰り返し露出したとまでは認められないとして、原告商品の商品形態の周知性を否定した。
また、争点3-②の原告商品の形態は不競法2条1項3号で保護される形態といえるかについては、先ず、不競法2条1項3号の「商品形態」は、同種の商品の基本的な機能や効用を果たすために不可欠な形態を除外したものと解するのが相当であると判示した。
「不競法2条1項3号は,他人の商品の形態を模倣した商品の譲渡行為等を不正競争とする一方,その括弧書きにおいて,当該商品の機能を確保するために不可欠な形態については同号による保護から除外される旨を規定する。これは,商品としての機能及び効用を果たすために不可避的に採用しなければならない商品形態を特定の者に独占させることは,商品の形態ではなく,同一の機能及び効用を有するその種の商品そのものの独占を招来することとなり,事業者間の自由な競争を阻害することになりかねないため,同種の商品の基本的な機能や効用を果たすために不可欠な形態については,同号の「商品の形態」から除外したものと解するのが相当である。」
その上で、本件については、原告商品の形態のうちの「ほぼ人の顔の大きさの丸みを帯びた四角形状」及び「目と口の部分を横長楕円型にくり抜き鼻の輪郭に沿って切れ込みを入れ」は,同種の商品の基本的な機能や効果を果たすために不可欠な形態であり、「金箔」もパックの素材として「金箔」を選択したという機能及び効用に関わる事項であり、従来からパックに使用されていたものであるから、いずれも不競法2条1項3号の「商品の形態」ということはできないと判断した。
原告は,原告商品が特徴的な色彩,光沢及び質感を有していることも「商品の形態」であると主張したが,裁判所は、「素材として金箔を採用したことによる金箔独特の色彩,光沢及び質感をいうものにすぎず,素材として金箔を採用すること自体はパック素材の選択という商品の機能及び効用に関わる事項であり,素材として金箔を採用すれば不可避的に金箔独特の色彩,光沢及び質感を有することになるから,これらの点も不競法2条1項3号による保護から除外されるというべきである。」と判示した。
(判決文) http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110301164525.pdf