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判例・実務情報

(最高裁、著作権) 「まねきTV」事件 TV番組のネットによる転送サービスは著作権の侵害にあたる



Date.2011年1月21日

平成23年01月18日 最高裁判所第三小法廷 まねきTV事件(第一審:平成19(ワ)5765、第二審:平成20(ネ)10059)

 

・破棄、差し戻し

・日本放送協会、日本テレビ放送網株式会社、株式会社東京放送、株式会社フジテレビジョン、株式会社テレビ朝日、株式会社テレビ東京 対 株式会社永野商店

・著作権法23条1項、112条1項、送信可能化権、公衆送信権、自動公衆装置

 最高裁は、知財高裁の控訴審の判決を破棄し、1対1の通信を行うソニーの「ロケーションフリー」機器を使ったサービスが「自動公衆送信装置」に該当し、「まねきTV」が著作権を侵害するとの判断を示した。

 

(経緯)

 被上告人の株式会社永野商店は、被上告人と契約を締結した利用者がインターネット回線を通じてテレビ番組を視聴することができるようにするサービス(本件サービス)を、「まねきTV」という名称で、有料で提供していた。

 本件サービスにおいては、ソニー株式会社製の商品名「ロケーションフリー」の構成機器であるベースステーションを用い、インターネット回線に常時接続する専用モニター又はパソコン等を有する利用者が、インターネット回線を通じてテレビ番組を視聴することができる。

 このようなサービスを提供していた被上告人に対し、上告人は、上告人の著作権が侵害されたとして、サービスの差止めと損害賠償の支払いを求める訴えを東京地裁に提起した。

 東京地裁は、上告人の訴えを認めず、二審の知財高裁も控訴を棄却した。本件は、これに不服の上告人が最高裁に上告した事件である。

 

(争点)

 本件における争点は、以下の通りである。

 (1)本件サービスにおいて、被上告人は、本件放送の送信可能化行為を行っているか

 (2)本件サービスにおいて、被上告人は、本件著作物の公衆送信行為を行っているか

 

(原審判決)

 ・送信可能化は、自動公衆送信装置の使用を前提とするところ(著作権法2条1項9号の5)、ここにいう自動公衆送信装置とは、公衆(不特定又は多数の者)によって直接受信され得る無線通信又は有線電気通信の送信を行う機能を有する装置でなければならない。

 

 ・各ベースステーションは、あらかじめ設定された単一の機器宛てに送信するという1対1の送信を行う機能を有するにすぎず、自動公衆送信装置とはいえないのであるから、ベースステーションに本件放送を入力するなどして利用者が本件放送を視聴し得る状態に置くことは、本件放送の送信可能化には当たらず、送信可能化権の侵害は成立しない。

 

 ・各ベースステーションは、自動公衆送信装置ではないから、本件番組を利用者の端末機器に送信することは、自動公衆送信には当たらず、公衆送信権の侵害は成立しない。

 

(最高裁の判断)

 (1)本件サービスにおいて、被上告人は、本件放送の送信可能化行為を行っているか

 

 最高裁は、著作権法が送信可能化を規制の対象とした趣旨・目的は、、公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行う送信(後に自動公衆送信として定義規定が置かれたもの)が既に規制の対象とされていた状況の下で、現に自動公衆送信が行われるに至る前の準備段階の行為を規制することにあると述べ、あらかじめ設定された単一の機器宛てに送信するという1対1の送信を行う機能しか持たない場合でも、その送信行為が自動公衆送信に当たる場合は、その装置も自動公衆送信装置に当たるとした。

 

自動公衆送信は、公衆送信の一態様であり(同項9号の4)、公衆送信は、送信の主体からみて公衆によって直接受信されることを目的とする送信をいう(同項7号の2)ところ、著作権法が送信可能化を規制の対象となる行為として規定した趣

旨、目的は、公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行う送信(後に自動公衆送信として定義規定が置かれたもの)が既に規制の対象とされていた状況の下で、現に自動公衆送信が行われるに至る前の準備段階の行為を規制することにある。このことからすれば、公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより、当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置は、これがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しない場合であっても、当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるときは、自動公衆送信装置に当たるというべきである。

 

 更に、自動公衆送信を行っている主体は、自動公衆送信装置が受信者からのリクエストに応じて情報を自動的に送信できる状態を作り出す行為を行う者と解するのが相当としている。

 

自動公衆送信が、当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置の使用を前提としていることに鑑みると、その主体は、当該装置が受信者からの求めに応じ情報を自動的に送信することができる状態を作り出す行為を行う者と解するのが相当であり、当該装置が公衆の用に供されている電気通信回線に接続しており、これに継続的に情報が入力されている場合には、当該装置に情報を入力する者が送信の主体であると解するのが相当である。

 

 本件の場合、被上告人は、ベースステーションを自ら管理するテレビアンテナに接続し、当該テレビアンテナで受信された本件放送がベースステーションに継続的に入力されるように設定した上、ベースステーションをその事務所に設置し、これを管理していた。そのため、利用者がベースステーションを所有しているとしても、ベースステーションに本件放送の入力をしている者は被上告人であり、ベースステーションを用いて行われる送信の主体は被上告人であるとした。

 更に、被上告人との関係等を問題にされることなく、誰でも、被上告人と本件サービスを利用する契約を締結すれば、同サービスを利用することができたことから、本件サービスの利用者は、送信の主体である被上告人からみて、不特定の者として公衆に当たると判断した。

 その結果、ベースステーションを用いて行われる送信は自動公衆送信であり、ベースステーションは自動公衆送信装置に当たるので、インターネットに接続している自動公衆送信装置であるベースステーションに本件放送を入力する行為は、本件放送の送信可能化に当たると判示した。

 

 (2) 本件サービスにおいて、被上告人は、本件著作物の公衆送信行為を行っているか

 本件サービスにおいて、テレビアンテナからベースステーションまでの送信の主体が被上告人であることは明らかである上、ベースステーションから利用者の端末機器までの送信の主体についても被上告人であるから、テレビアンテナから利用者の端末機器に本件番組を送信することは、本件番組の公衆送信に当たる、と判示した。

 

(判決文) http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110120144645.pdf