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判例・実務情報

【特許】 発明の新規性喪失の例外規定



Date.2012年11月20日

1.新規性喪失の例外規定とは

 新規性喪失の例外規定とは、特定の条件の下で発明を公開した後に特許出願した場合に、先の公開によってその発明の新規性が喪失しないものとして取り扱うことをいう(特許法30条)。

 

2.手続的要件

 (1) 以下の(a)~(c)の手続を行う必要がある。

(a) 権利者の行為に起因して公開された発明の公開日から 6 月以内に特許出願すること(第2項)。

(b) 特許出願時に発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けようとする旨を記載した書面を提出すること(第3項)。

(c) 特許出願の日から 30 日以内に、発明の新規性喪失の例外規定の適用の要件を満たすことを証明する書面を提出すること(第3項)。

 

 尚、上記(b)については、願書に、発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けようとする旨を記載することで省略することが可能。

 

(2) 上記(c)の証明する書面

出願人自らによる証明書の提出が可能

・但し、新規性喪失の例外規定の適用に疑義を抱かせる証拠が発見された場合には、同項の規定の適用が認められず、その発明を根拠として特許出願に係る発明の新規性や進歩性を否定する拒絶理由や無効理由が生じる可能性がある。

 この場合、出願人は、特許出願の日から 30 日を過ぎていても、先に提出した自らによる証明書に記載した事項の範囲内で、それらの事項が事実であることを裏付けるための補充資料を、意見書又は上申書等を通じて提出することができる。

 

3.公開された発明が複数存在する場合

(1) それぞれの公開された発明について、上記(a)~(c)の手続が必要。

  但し、上記複数存在する発明のうち、手続を行った発明の公開以降に公開された発明については、以下の1.又は2.の何れかを満たすことを条件に、上記(c)の「証明する書面」の提出の省略が可能。

 

1.手続を行った発明と同一であるか又は同一とみなすことができ、かつ、手続を行った発明の公開行為と密接に関連する公開行為によって公開された発明

2.手続を行った発明と同一であるか又は同一とみなすことができ、かつ、権利者又は権利者が公開を依頼した者のいずれでもない者によって公開された発明

 

4.通常の特許出願以外の出願の場合

(1) 優先権主張を伴う出願

① 国内優先権主張出願

 基礎出願について、上記(a)~(c)の手続をした場合、国内優先権主張出願についても、以下の手続をすることを条件に、新規性喪失の例外規定の適用を受けることができる。

 

1. 発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けようとする旨を記載した書面を、後の出願時に、あらためて提出すること。

2. 「証明する書面」を後の出願日から30日以内に提出すること。

但し、基礎出願で提出していた書面と内容に変更がない場合は、後の出願時にその旨を願書に表示することで、提出を省略できる。

 

 尚、基礎出願で手続を行っていなかった場合に、発明の公開日から 6 月以内に後の出願をして上記(a)~(c)の手続を行えば、新規性喪失の例外規定の適用を受けることができる。

 

② パリ条約による優先権主張出願

 発明の公開日から6月以内に日本へ出願し、その出願の際に上記(a)~(c)の手続を行うことにより新規性喪失の例外規定の適用を受けることができる。

③ PCT出願

・PCT出願について例外規定の適用を受けたい場合は、発明の公開日から6ヶ月以内に国際出願をすることが必要。

 

国内処理基準時の属する日後30日以内に、例外規定の適用を受けようとする旨を記載した書面を提出することが必要。

 但し、国際段階で、「不利にならない開示又は新規性喪失の例外に関する申立て」(PCT規則 4.17(v)、26 の 3.1)が、されている場合は省略可能。

 尚、国内処理基準時とは、国内書面提出期間が満了する時(国内書面提出期間内に出願人が出願審査の請求をするときは、その請求の時)をいう。

 

④ 実用新案登録出願における考案の新規性喪失の例外

 特許出願と同様。

 

5.発明が意に反して公開された場合

(1) 発明の公開日から6月以内に特許出願すれば、例外規定の適用を受けることが可能。

 また、例外規定の適用を受けようとする旨を記載した書面、「証明する書面」の提出は不要

 

6.留意点

(1) 出願前に公開した発明について、2項の例外規定の適用を受けたとしても、例えば、第三者が同じ発明について先に特許出願していた場合や先に公開していた場合には、特許を受けることができない。

 

 また、外国出願を予定している場合には、各国の発明の新規性喪失の例外規定にも留意する必要がある。各国の国内法令によっては、自らが公開したことにより、その国において特許を受けることができなくなる可能性がある。

 

(2) 複数人の権利者のうちの一人が独断で発明を公開した場合に、1項の「意に反して」と認められなかったケースがある(東京地裁平成16年(ワ)11289号)。