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判例・実務情報

【特許】 特許が付与されるための要件



Date.2012年5月7日

 特許が付与されるためには、以下のような実体的要件を満たしている必要があります。

 

1.特許法上の「発明」であること 

2.産業上の利用が可能であること 

3.新規性を有すること 

4.進歩性を有すること 

5.先願の発明であること 

6.出願後に公開された先願の明細書に記載された発明でないこと 

7.公序良俗または公衆の衛生を害するおそれがないこと

 

 

1.特許法上の「発明」であること(特許法第29条柱書)

  以下に列挙するものは、特許法上の発明に該当しないとして、特許が付与されません。

 

(1) 自然法則自体

 「発明」は、自然法則を利用したものでなければならず、万有引力の法則などの自然法則自体は、「発明」に該当しません。

(2) 単なる発見であって創作でないもの

 発明者が意識して何らの技術的思想を案出していない天然物、自然現象等の単なる発見は「発明」に該当しません。

 しかし、天然物から人為的に単離した化学物質、微生物などは、創作したものであり、「発明」に該当します。

(3) 自然法則に反するもの

 熱力学第二法則などの自然法則に反する手段、例えば、いわゆる「永久機関」などは「発明」に該当しません。

(4) 自然法則を利用していないもの

 自然法則以外の法則、人為的な取決め、数学上の公式、人間の精神活動に当たるとき、あるいはこれらのみを利用しているとき(例えば、ビジネスを行う方法それ自体)は、「発明」に該当しません。

(5) 技術的思想でないもの

 技能(個人の熟練によって到達しうるものであって、知識として第三者に伝達できる客観性が欠如しているもの)は、「発明」に該当しません。

 また、情報の単なる提示(提示される情報の内容にのみ特徴を有するものであって、情報の提示を主たる目的とするもの)も、「発明」に該当しません。

(6) 単なる美的創造物(例えば、絵画、彫刻など)

(7) 課題を解決することが明らかに不可能なもの

 

 

2.産業上の利用性を有すること(特許法第29条柱書)

 以下に列挙するものは、産業上利用できない発明であるとして、特許が付与されません。

 

(1) 人間を手術、治療又は診断する方法

(2) その発明が業として利用できない発明

 ・喫煙方法のように、個人的にのみ利用される発明

 ・学術的、実験的にのみ利用される発明

(3) 実際上、明らかに実施できない発明

 理論的にはその発明を実施することは可能であっても、その実施が実際上考えられない発明

 

 

3.新規性を有すること(特許法第29条第1項各号)

 特許出願前に公知の発明と同一の発明は、特許を受けることができません。具体的には、以下の発明に該当するものは新規性を有しないとされます。

 

(1) 公然知られた発明(1号) 

(2) 公然実施をされた発明(2号) 

(3) 頒布された刊行物に記載された発明または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(3号) 

 

新規性喪失の例外規定(特許法第30条)

 新規性には例外規定があり、上記(a)(b)の事由に該当するに至った場合でも、一定の要件を満たす場合には該当するに至らなかったものとみなされます。

 

 

4.進歩性を有すること(特許法第29条第2項)

 新規性を有する発明であっても、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(いわゆる当業者)が、公知技術に基づいて容易に発明をすることができたときは、進歩性がないとして、特許が付与されません。

 

 

5.先願の発明であること(特許法第39条)

 同一の発明について異なつた日に二以上の特許出願があつたときは、最先の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができます。

 また、同一の発明について同日に二以上の特許出願があつたときは、特許出願人の協議により定めた一の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができます。

 

 

6.出願後に公開された先願の明細書に記載された発明ではないこと(特許法第29条の2

 出願の際には公開されていなかったが、その後に出願公開された先願の発明と同一である場合は、特許が付与されません。

 但し、先願の発明者または出願人と完全に一致している場合は適用されません。


 

7.公序良俗または公衆の衛生を害するおそれがないこと(特許法第32条)

 公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがある発明については、特許を受けることができません。