早期に特許権を取得するためには、特許庁においてできるだけ早期に審査・審理に着手して貰う必要があります。早期審査や早期審理は、一定の条件を満たす特許出願に対して、審査の着手から最終処分までの期間を大幅に短縮させることが可能になります。そのため、通常の審査よりもかなり早期に特許権の取得が可能になります。
1.早期審査
2014年度の審査待ち期間(特許出願の審査請求後、最初の審査結果が通知されるまでの期間)は、平均で9.6ヶ月となっています(特許行政年次報告書2015年版)。早期審査を活用すれば、通常の審査よりもかなり早期に特許権の取得が可能になります。
尚、早期審査をした場合の審査待ち期間は、平均で約2.1ヶ月となっています(特許行政年次報告書2015年版)。
(1) 早期審査の対象となる出願
(a) 出願審査請求がなされていること
但し、出願審査請求と、早期審査申請の手続は同時でも構いません。
(b) 以下の何れかの要件を満たしていること。
①中小企業、個人、大学、公的研究機関等の出願
②外国関連出願
③実施関連出願
・出願人自身や実施許諾を受けた者が、その発明を実施または実施の予定がある場合。
・特許法施行令第三条に定める処分(農薬取締法における登録、薬事法における承認)を受けるために必要な手続(委託圃場試験依頼書、治験計画届書の提出等)を行っている場合
④グリーン関連出願
・グリーン発明(省エネ、CO2削減等の効果を有する発明)について特許を受けようとする特許出願
⑤震災復興支援関連出願
・平成23年8月1日から当面1年間。必要に応じて延長を検討。
・出願人の全部又は一部が、災害救助法(昭和 22 年法律第 118 号)の適用される地域が対象。
(c) 特許法第42条第1項の規定によりみなし取下げとならないものであること
・国際出願が日本国を指定国としている場合、及び国内出願で優先権主張をしている場合において、当該出願の優先権主張の基礎となっている国内出願が、42条第1項の規定により優先日から1年3月を経過した時にみなし取下げとならないもの。
(2) 早期審査のための手続き
(a) 手続き
・「早期審査に関する事情説明書」を特許庁に提出して申請します。
・「早期審査に関する事情説明書」については、さらに「早期審査に関する事情説明補充書」により補充を行うことも可能です。
ただし、特許庁から「早期審査の対象としない」旨を記載した「早期審査非選定通知書」が出願人(代理人)に郵送された後は、上記補充書を提出することはできず、改めて「早期審査に関する事情説明書」を提出することになります。
・特許庁へ支払う費用は無料です(書面での提出の場合でも、電子化手数料も不要)。
(b) 早期審査に関する事情説明書
早期審査に関する事情説明書には、(a)事情、(b)先行技術文献の開示および対比説明等を記載します。
(ⅰ) 事情
中小企業の場合は従業員数や資本金等を記載し、早期審査・早期審理ガイドラインに定める中小企業であることを明示します。個人の方の場合は、その旨を、大学の場合は学校教育法第1条に定められた大学であるとの記載をします。
国際出願番号や出願した国の出願番号を記載します。
製品を実際に製造販売している場合や、早期審査申請から2年以内に生産開始を予定している場合など、実施状況を記載します。
・請求項に記載された発明が、省エネ、CO2 削減等の効果を有する発明(グリーン発明)であることの合理的な説明を記載します。
・出願人の全部又は一部が、特定被災地域に住所又は居所を有していること、震災により被災したこと、出願発明が、当該事業所等の事業としてなされた発明又は実施される発明であることを記載します。
(ⅱ)先行技術文献の開示および対比説明
先行技術の開示に当たり先行技術調査を改めて行うことは必要ではありません(大企業との共同出願の場合は、原則、先行技術調査が必要。)。但し、出願人が知っている先行技術文献との対比説明は必要になります。
また、明細書に先行技術文献との対比説明がある場合には、当該説明を簡略化することもできます。
先行技術の開示の際の先行技術調査、及び対比説明の両方が必要です。
ただし、他国の特許庁において先行技術調査結果が得られている場合は、当該調査結果を先行技術調査に代えることが可能です。
・先行技術の開示の際の先行技術調査、及び対比説明の両方が必要です。
・明細書に先行技術文献との対比説明がある場合には、当該説明を簡略化することができます。
・先行技術文献の調査は原則不要。但し、出願人知っている先行技術文献との対比説明は必要です。
(3) 審査手続
・早期審査の対象とならなかった場合は、特許庁よりその旨の通知がなされます(対象となった場合は、通知なし)
・審査官による早期審査の開始
(参照元) http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/t_torikumi/souki/pdf/v3souki/guideline.pdf
2.スーパー早期審査
スーパー早期審査は、早期審査よりもさらに早く審査を受けることができます。これにより、さらに早期に特許権の取得が図れます。
(1) スーパー早期審査の対象となる出願
出願審査請求がなされており、以下の(a)及び(b)の両方の要件を満たす特許出願が対象となります。
(a) 「実施関連出願」かつ「外国関連出願」であること。
(b) スーパー早期審査の申請前4週間以降になされたすべての手続をオンライン手続とする出願であること。
※但し、拒絶理由通知書等が通知されるなどの審査着手前であることが必要となっています。
(2) スーパー早期審査のための手続
・申請手続は、通常の早期審査の申請と同様となっています。
・【早期審査に関する事情説明】の欄の「事情」において、「スーパー早期審査を希望する」との記載をします。これ以外の表現を用いた場合、スーパー早期審査の申請とは取り扱われないことがあるとされています。
(3) 留意点
・以下の場合に該当したときは、スーパー早期審査の対象外とされています。
(a)スーパー早期審査の申請前4週間以降にオンライン手続以外の手続が発生した場合(オンラインでの受領を行わず、書面での発送になった場合も含む。)
(b)スーパー早期審査の申請以降に出願人の特許庁に対する手続に方式不備等があり、審査に遅延が生じた場合
(c)拒絶理由通知書の発送の日から30日以内(在外者の場合は2か月以内)に応答がなされなかった場合
(d)分割出願について、上申書または早期審査の事情説明書により、分割の実体的要件を満たすこと等の説明等がなされていない場合
・国内移行した国際出願についても、平成21年10月1日より、スーパー早期審査の対象となりました。
(4) 審査までの待ち期間
(a)一次審査までの待ち期間
・通常の国内出願 スーパー早期審査の申請の日から1か月以内。
・国内移行した国際出願 スーパー早期審査の申請の日から2か月以内。
(b)二次審査までの待ち期間
・通常の国内出願、国内移行した国際出願 1か月以内。
(参照元) http://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/souki/pdf/supersoukisinsa/supersoukisinsa.pdf
3.早期審理
2014年度の拒絶査定不服審判の審理期間は、平均で12.4ヶ月となっています(特許行政年次報告書2015年版)。早期審理を活用すれば、通常の審理よりもかなり早期に特許権の取得が可能になります。
尚、早期審理を活用した場合の審理期間は、平均で3.1ヶ月となっています(特許行政年次報告書2015年版)。
(1) 早期審理の対象
・以下の要件のいずれかの要件を備えた特許出願に係る拒絶査定不服審判事件が対象となります。
なお、早期審査を利用した出願の場合でも、不服審判では改めて早期審理の申請をする必要があります。
(a)実施関連出願に係る審判請求
(b)外国関連出願に係る審判請求
(c)審判請求人の全部又は一部が、大学・短期大学、公的研究機関、又は承認若しくは認定を受けたTLO
(d)審判請求人の全部又は一部が、中小企業又は個人
(e)審判請求人でない者(第三者)が、出願公開後審決前にその発明を実施している
(f)グリーン関連出願に係る審判請求であるもの
(g)審判請求人の全部又は一部が、特定被災地域に住所又は居所を有する者
・審判請求人の全部又は一部が、災害救助法(昭和 22 年法律第 118 号)の適用される地域が対象。
(2) 早期審理のための手続
・「早期審理に関する事情説明書」を特許庁に提出して申請します。
・「早期審理に関する事情説明書」については、さらに「早期審理に関する事情説明補充書」により補充を行うことも可能です。
(b) 早期審理に関する事情説明書
・「早期審査に関する事情説明」の「事情」の記載要領と同様です。
・審査段階で既に早期審査又は優先審査の対象となっている場合、「早期審理に関する事情説明」の欄には、「早期審査(優先審査)に関する事情説明書の記載と同じ。」と記入すれば足ります。
・審判請求時に十分な先行技術文献の開示と対比説明とを行っている場合、「早期審理に関する事情説明」にそれらを記載する必要はありません。
(3) 審理手続
・早期審理の対象とならなかった場合は、特許庁よりその旨の通知がなされます(対象となった場合は、通知なし)
・審判官の合議体による早期審理の開始
早期に特許権を取得するためには、特許庁においてできるだけ早期に審査・審理に着手して貰う必要があります。早期審査や早期審理は、一定の条件を満たす特許出願に対して、審査の着手から最終処分までの期間を大幅に短縮させることが可能になります。そのため、通常の審査よりもかなり早期に特許権の取得が可能になります。
1.早期審査
2014年度の審査待ち期間(特許出願の審査請求後、最初の審査結果が通知されるまでの期間)は、平均で9.6ヶ月となっています(特許行政年次報告書2015年版)。早期審査を活用すれば、通常の審査よりもかなり早期に特許権の取得が可能になります。
尚、早期審査をした場合の審査待ち期間は、平均で約2.1ヶ月となっています(特許行政年次報告書2015年版)。
(1) 早期審査の対象となる出願
(a) 出願審査請求がなされていること
但し、出願審査請求と、早期審査申請の手続は同時でも構いません。
(b) 以下の何れかの要件を満たしていること。
①中小企業、個人、大学、公的研究機関等の出願
②外国関連出願
③実施関連出願
・出願人自身や実施許諾を受けた者が、その発明を実施または実施の予定がある場合。
・特許法施行令第三条に定める処分(農薬取締法における登録、薬事法における承認)を受けるために必要な手続(委託圃場試験依頼書、治験計画届書の提出等)を行っている場合
④グリーン関連出願
・グリーン発明(省エネ、CO2削減等の効果を有する発明)について特許を受けようとする特許出願
⑤震災復興支援関連出願
・平成23年8月1日から当面1年間。必要に応じて延長を検討。
・出願人の全部又は一部が、災害救助法(昭和 22 年法律第 118 号)の適用される地域が対象。
(c) 特許法第42条第1項の規定によりみなし取下げとならないものであること
・国際出願が日本国を指定国としている場合、及び国内出願で優先権主張をしている場合において、当該出願の優先権主張の基礎となっている国内出願が、42条第1項の規定により優先日から1年3月を経過した時にみなし取下げとならないもの。
(2) 早期審査のための手続き
(a) 手続き
・「早期審査に関する事情説明書」を特許庁に提出して申請します。
・「早期審査に関する事情説明書」については、さらに「早期審査に関する事情説明補充書」により補充を行うことも可能です。
ただし、特許庁から「早期審査の対象としない」旨を記載した「早期審査非選定通知書」が出願人(代理人)に郵送された後は、上記補充書を提出することはできず、改めて「早期審査に関する事情説明書」を提出することになります。
・特許庁へ支払う費用は無料です(書面での提出の場合でも、電子化手数料も不要)。
(b) 早期審査に関する事情説明書
早期審査に関する事情説明書には、(a)事情、(b)先行技術文献の開示および対比説明等を記載します。
(ⅰ) 事情
①中小企業、個人、大学、公的研究機関等の出願
中小企業の場合は従業員数や資本金等を記載し、早期審査・早期審理ガイドラインに定める中小企業であることを明示します。個人の方の場合は、その旨を、大学の場合は学校教育法第1条に定められた大学であるとの記載をします。
②外国関連出願
国際出願番号や出願した国の出願番号を記載します。
③実施関連出願
製品を実際に製造販売している場合や、早期審査申請から2年以内に生産開始を予定している場合など、実施状況を記載します。
④グリーン関連出願
・請求項に記載された発明が、省エネ、CO2 削減等の効果を有する発明(グリーン発明)であることの合理的な説明を記載します。
⑤震災復興支援関連出願
・出願人の全部又は一部が、特定被災地域に住所又は居所を有していること、震災により被災したこと、出願発明が、当該事業所等の事業としてなされた発明又は実施される発明であることを記載します。
(ⅱ)先行技術文献の開示および対比説明
①中小企業、個人、大学、公的研究機関等の出願
先行技術の開示に当たり先行技術調査を改めて行うことは必要ではありません(大企業との共同出願の場合は、原則、先行技術調査が必要。)。但し、出願人が知っている先行技術文献との対比説明は必要になります。
また、明細書に先行技術文献との対比説明がある場合には、当該説明を簡略化することもできます。
②外国関連出願
先行技術の開示の際の先行技術調査、及び対比説明の両方が必要です。
ただし、他国の特許庁において先行技術調査結果が得られている場合は、当該調査結果を先行技術調査に代えることが可能です。
③実施関連出願
・先行技術の開示の際の先行技術調査、及び対比説明の両方が必要です。
・明細書に先行技術文献との対比説明がある場合には、当該説明を簡略化することができます。
④グリーン関連出願
・先行技術の開示の際の先行技術調査、及び対比説明の両方が必要です。
・明細書に先行技術文献との対比説明がある場合には、当該説明を簡略化することができます。
⑤震災復興支援関連出願
・先行技術文献の調査は原則不要。但し、出願人知っている先行技術文献との対比説明は必要です。
(3) 審査手続
・早期審査の対象とならなかった場合は、特許庁よりその旨の通知がなされます(対象となった場合は、通知なし)
・審査官による早期審査の開始
(参照元) http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/t_torikumi/souki/pdf/v3souki/guideline.pdf
2.スーパー早期審査
スーパー早期審査は、早期審査よりもさらに早く審査を受けることができます。これにより、さらに早期に特許権の取得が図れます。
(1) スーパー早期審査の対象となる出願
出願審査請求がなされており、以下の(a)及び(b)の両方の要件を満たす特許出願が対象となります。
(a) 「実施関連出願」かつ「外国関連出願」であること。
(b) スーパー早期審査の申請前4週間以降になされたすべての手続をオンライン手続とする出願であること。
※但し、拒絶理由通知書等が通知されるなどの審査着手前であることが必要となっています。
(2) スーパー早期審査のための手続
・申請手続は、通常の早期審査の申請と同様となっています。
・【早期審査に関する事情説明】の欄の「事情」において、「スーパー早期審査を希望する」との記載をします。これ以外の表現を用いた場合、スーパー早期審査の申請とは取り扱われないことがあるとされています。
(3) 留意点
・以下の場合に該当したときは、スーパー早期審査の対象外とされています。
(a)スーパー早期審査の申請前4週間以降にオンライン手続以外の手続が発生した場合(オンラインでの受領を行わず、書面での発送になった場合も含む。)
(b)スーパー早期審査の申請以降に出願人の特許庁に対する手続に方式不備等があり、審査に遅延が生じた場合
(c)拒絶理由通知書の発送の日から30日以内(在外者の場合は2か月以内)に応答がなされなかった場合
(d)分割出願について、上申書または早期審査の事情説明書により、分割の実体的要件を満たすこと等の説明等がなされていない場合
・国内移行した国際出願についても、平成21年10月1日より、スーパー早期審査の対象となりました。
(4) 審査までの待ち期間
(a)一次審査までの待ち期間
・通常の国内出願 スーパー早期審査の申請の日から1か月以内。
・国内移行した国際出願 スーパー早期審査の申請の日から2か月以内。
(b)二次審査までの待ち期間
・通常の国内出願、国内移行した国際出願 1か月以内。
(参照元) http://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/souki/pdf/supersoukisinsa/supersoukisinsa.pdf
3.早期審理
2014年度の拒絶査定不服審判の審理期間は、平均で12.4ヶ月となっています(特許行政年次報告書2015年版)。早期審理を活用すれば、通常の審理よりもかなり早期に特許権の取得が可能になります。
尚、早期審理を活用した場合の審理期間は、平均で3.1ヶ月となっています(特許行政年次報告書2015年版)。
(1) 早期審理の対象
・以下の要件のいずれかの要件を備えた特許出願に係る拒絶査定不服審判事件が対象となります。
なお、早期審査を利用した出願の場合でも、不服審判では改めて早期審理の申請をする必要があります。
(a)実施関連出願に係る審判請求
(b)外国関連出願に係る審判請求
(c)審判請求人の全部又は一部が、大学・短期大学、公的研究機関、又は承認若しくは認定を受けたTLO
(d)審判請求人の全部又は一部が、中小企業又は個人
(e)審判請求人でない者(第三者)が、出願公開後審決前にその発明を実施している
(f)グリーン関連出願に係る審判請求であるもの
(g)審判請求人の全部又は一部が、特定被災地域に住所又は居所を有する者
・審判請求人の全部又は一部が、災害救助法(昭和 22 年法律第 118 号)の適用される地域が対象。
(2) 早期審理のための手続
(a) 手続き
・「早期審理に関する事情説明書」を特許庁に提出して申請します。
・「早期審理に関する事情説明書」については、さらに「早期審理に関する事情説明補充書」により補充を行うことも可能です。
・特許庁へ支払う費用は無料です(書面での提出の場合でも、電子化手数料も不要)。
(b) 早期審理に関する事情説明書
・「早期審査に関する事情説明」の「事情」の記載要領と同様です。
・審査段階で既に早期審査又は優先審査の対象となっている場合、「早期審理に関する事情説明」の欄には、「早期審査(優先審査)に関する事情説明書の記載と同じ。」と記入すれば足ります。
・審判請求時に十分な先行技術文献の開示と対比説明とを行っている場合、「早期審理に関する事情説明」にそれらを記載する必要はありません。
(3) 審理手続
・早期審理の対象とならなかった場合は、特許庁よりその旨の通知がなされます(対象となった場合は、通知なし)
・審判官の合議体による早期審理の開始
(参照元) http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/t_torikumi/souki/pdf/v3souki/guideline.pdf