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判例・実務情報

【知財高裁、商標】 商標「ほっとレモン」は記述的商標であり、使用による識別性を有しないとされた事例(ほっとレモン事件)



Date.2013年8月30日

知財高裁平成250828日判決 平成24(行ケ)10352 ほっとレモン事件

 

・請求棄却

・カルピス株式会社 対 特許庁長官

・商標法313号、2項 記述的商標、使用による識別性

 

(経緯)

 原告は、第32類「レモンを加味した清涼飲料、レモンを加味した果実飲料」を指定商品とする下記登録商標(第5427470号)の商標権者である。

 本件商標登録に対しては異議申立てがなされ、特許庁は、本件商標は記述的商標に該当し商標法313号違反であること、使用により自他商品識別力を獲得したものと認められず、32項に該当しないことを理由に取消決定がなされた。

 本件は、取消決定に不服の原告がその取消しを求めて知財高裁に訴えを提起したものである。

 (争点)

 ・313号該当性の判断の誤り

 ・32項該当性についての判断の誤り

 

(裁判所の判断)

1.313号該当性の判断の誤り

 本件商標について、裁判所は次の通り認定した。即ち、片仮名「レモン」部分は、指定商品を含む清涼飲料・果実飲料との関係では、果実の「レモン」又は「レモン果汁を入れた飲料又はレモン風味の味付けをした飲料」であることを意味し、平仮名「ほっと」部分は、指定商品との関係では、「熱い」、「温かい」を意味すると理解するのが自然であるとした。

 また、本件輪郭部分については、上辺中央を上方に湾曲させた輪郭線により囲み枠を設けることは、清涼飲料水等では、比較的多く用いられているといえるとして、需要者に対し、強い印象を与えるものではない、とした。

 さらに、「ほっとレモン」の書体についても、通常の工夫の範囲を超えるものとはいえないとした。

 

 原告は、「指定商品との関係において「人をほっとさせるレモン飲料、人がほっとしたときに飲むレモン飲料、人がほっとしたいときに飲むレモン飲料」の如き観念・イメージを、間接的に需要者に与えることが考えられ、「温かいレモン飲料」の意を需要者に直接的に想起させるとは言い難い。」などとして本件商標が、「普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」には該当しないと主張した。

 

 しかし、裁判所は、本件に現れたすべての証拠によるも、本件商標について、「熱い」、「温かい」との観念が生じることを否定する事実は認められないとして、本件商標は313号該当性すると判示した。

 

2.32項該当性についての判断の誤り

 32項は、記述商標であっても、使用された結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものについては、商標登録を受けることができる旨を規定しているが、本件商標については当該32項に該当しないとの判断をした。

 

 (1) 先ず、裁判所は、下記使用商標が「輪郭部分」、「レモン」、「ほっと」の各部分において出所識別機能を備えるか否かについて、次の通り判断した。 

 

 

 即ち、使用商標における「輪郭部分」は、下記の通り、「右上隅以外の隅がレモンの図形等により隠され、その全体の形状を確認することができない。したがって、輪郭部分の形状が長く使用され、その特徴によって、商品の出所識別機能を有するに至ったと解することは到底できない。」と判断した。

 

  また、使用商標における「レモン」の文字部分については、使用商標においてレモンの図柄やレモンを連想させる円形図形、色彩が施されていること、指定商品を含む清涼飲料・果実飲料においては、各種果物がその原材料として使用されていることを挙げ、果実の「レモン」又は「レモン果汁を入れた飲料又はレモン風味の味付けをした飲料」であることを端的に示したものと合理的に理解されるとして、「レモン」の文字部分が長く使用されたことより、出所識別機能を備えるに至ったといえない、と判断した。

 

 更に、使用商標における「ほっと」の文字部分についても、「ほっと」と「果物等の素材」とを組み合わせた文字が、果物等の素材を原材料とし、あるいは加味した、温かい清涼飲料・果実飲料であることを示す語として普通に使用されており、需要者はそのように認識、理解していると解するのが合理的であること、原告商品も、「温かいレモン果汁を入れた飲料又はレモン風味の味付けをした飲料」であることなどを挙げ、「ほっと」の文字部分が、温かい状態で飲まれることを想定した清涼飲料等であることを示す表記であるといえると判断した。その結果、使用商標中の「ほっと」の文字部分も長く使用され、その特徴等によって、商品の出所識別機能を有するに至ったとすることはできないと判示した。

 

 (2) 次に、裁判所は、本件商標が全体観察により商品の出所識別機能を備えるか否かについても判断した。

 この点については、「ほっとレモン」、「ホットレモン」等の名称に関する調査結果等が証拠として採用された。そして裁判所は、その調査結果から、「「ほっとレモン」の文字、及び同文字の一部である平仮名「ほっと」が、調査時点において、「缶やペットボトル入りの温かいレモン飲料」との品質、原材料等を説明的に示すものとして使用されており、それを超えて、特定の出所識別機能を有するものとして使用されているということはできない」と判断した。

 

 以上により、本件商標は313号に該当しており、また、使用により需要者が何人かの業務に係る商品であると認識できるものでもないとして、原告の請求は棄却された。

 

 

(判決文) http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130829114918.pdf