平成22年(行ケ)第10012 エコルクス事件 平成22年12月15日判決
・請求認容
・X 対 アイリスオーヤマ株式会社
・商標法2条3項1号、8号、50条2項
(経緯)
被告のアイリスオーヤマ株式会社は、第11類「電球類及び照明器具」を指定商品とする本件商標「エコルクス」(登録第4595453号)の商標権者である。
原告は、本件商標がその指定商品のうち、「LEDランプ」について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって、不使用による取消審判を請求した。
特許庁は、被告が本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、本件商品の包装に本件商標を付する行為を行ったから、本件商標の登録を取り消すことはできないとして、請求不成立審決をした。
本件は、その審決取消訴訟である。
(争点)
本件の主な争点は、以下の通りである。
①商標法2条3項1号に基づく本件商標の使用の有無
②商標法2条3項8号に基づく本件商標の使用の有無
③商標法50条2項ただし書の「正当な理由」の有無
(裁判所の判断)
①について(商標法2条3項1号に基づく本件商標の使用の有無)
被告は、原告による不使用取消審判の請求登録日(平成21年4月30日)以前から本件商品の包装用容器(以下「本件容器」という。)に、本件商標を付して販売する準備を進めていた。具体的には、本件容器のパッケージデザインについて、外部会社と電子メールでやり取りをしていた。また、パッケージデザインには、本件商標と社会通念上同一と認められる標章が付されていた。
本件では、本件商標と社会通念上同一と認められる標章を含むパッケージデザインを電子メールでやり取りした行為が、2条3項1号に基づく本件商標の使用に該当するか否かが問題となった。
この点に関し、先ず裁判所は、商標法2条3項1号所定の「商品の包装に標章を付する行為」とは、「同号に並列して掲げられている「商品に標章を付する行為」と同視できる態様のもの、すなわち、指定商品を現実に包装したものに標章を付し又は標章を付した包装用紙等で指定商品を現実に包装するなどの行為をいい、指定商品を包装していない単なる包装紙等に標章を付する行為又は単に標章の電子データを作成若しくは保持する行為は、商標法2条3項1号所定の「商品の包装に標章を付する行為」に当たらないものと解するのが相当である。」と判示した。
その上で、本件に於いては、被告が上記の電子データを外部会社から受領し、保持したからといって、2条3項1号所定の「商品の包装に標章を付する行為」ということはできないと判断した。
②について(商標法2条3項8号に基づく本件商標の使用の有無)
被告は、新商品の紹介等をする目的で、本件審判の請求登録日以前に情報誌の編集を開始していた。この情報誌には、上記パッケージデザインが印刷されていた。そして、当該請求登録日と同日に、各小売店に情報誌を発送していた。但し、各小売店に配達されたのは、請求登録日より後の5月30日であった。
本件では、この発送行為が2条3項8号に基づく本件商標の使用に該当するか否かが争われた。
この点に関し、先ず裁判所は、商標法2条3項8号所定の標章を付した広告等の「頒布」とは、「同号に並列して掲げられている「展示」及び「電磁的方法により提供する行為」と同視できる態様のもの、すなわち、標章を付した広告等が一般公衆による閲覧可能な状態に置かれることをいい、標章を付した広告等が一般公衆による閲覧可能な状態に置かれていない場合には、商標法2条3項8号所定の標章を付した広告の「頒布」に当たらないものと解するのが相当である。」と判示した。
その上で、本件に於いては、 「本件容器の写真が広告として掲載された本件情報誌が小売店に配達され、もって一般公衆による閲覧可能な状態に置かれたのは、平成21年5月1日である。したがって、被告が本件容器の広告写真が掲載された本件情報誌を頒布したのは、同日(平成21年5月1日)であるというべきであって、被告が前日(平成21年4月30日)に発送を行ったからといって、当該発送行為をもって本件商標を付した広告等の頒布に該当するとはいえない。」と判断した。
③について(商標法50条2項ただし書の「正当な理由」の有無)
「商標法50条2項ただし書にいう「正当な理由」とは、地震等の不可抗力によって生じた事由、第三者の故意又は過失によって生じた事由、法令による禁止等の公権力の発動に係る事由その他の商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の責めに帰することができない事由が発生したために、商標権者等において、登録商標をその指定商品又は指定役務について使用することができなかった場合をいうと解するのが相当である」と判示した上で、本件の上記の様な経緯においては、そのような不可抗力等の事由は、何ら認められないと判断した。
尚、平成22年(行ケ)第10013 平成22年12月15日判決も本件と同旨である。
(判決文) http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20101216100215.pdf
平成22年(行ケ)第10012 エコルクス事件 平成22年12月15日判決
・請求認容
・X 対 アイリスオーヤマ株式会社
・商標法2条3項1号、8号、50条2項
(経緯)
被告のアイリスオーヤマ株式会社は、第11類「電球類及び照明器具」を指定商品とする本件商標「エコルクス」(登録第4595453号)の商標権者である。
原告は、本件商標がその指定商品のうち、「LEDランプ」について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって、不使用による取消審判を請求した。
特許庁は、被告が本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、本件商品の包装に本件商標を付する行為を行ったから、本件商標の登録を取り消すことはできないとして、請求不成立審決をした。
本件は、その審決取消訴訟である。
(争点)
本件の主な争点は、以下の通りである。
①商標法2条3項1号に基づく本件商標の使用の有無
②商標法2条3項8号に基づく本件商標の使用の有無
③商標法50条2項ただし書の「正当な理由」の有無
(裁判所の判断)
①について(商標法2条3項1号に基づく本件商標の使用の有無)
被告は、原告による不使用取消審判の請求登録日(平成21年4月30日)以前から本件商品の包装用容器(以下「本件容器」という。)に、本件商標を付して販売する準備を進めていた。具体的には、本件容器のパッケージデザインについて、外部会社と電子メールでやり取りをしていた。また、パッケージデザインには、本件商標と社会通念上同一と認められる標章が付されていた。
本件では、本件商標と社会通念上同一と認められる標章を含むパッケージデザインを電子メールでやり取りした行為が、2条3項1号に基づく本件商標の使用に該当するか否かが問題となった。
この点に関し、先ず裁判所は、商標法2条3項1号所定の「商品の包装に標章を付する行為」とは、「同号に並列して掲げられている「商品に標章を付する行為」と同視できる態様のもの、すなわち、指定商品を現実に包装したものに標章を付し又は標章を付した包装用紙等で指定商品を現実に包装するなどの行為をいい、指定商品を包装していない単なる包装紙等に標章を付する行為又は単に標章の電子データを作成若しくは保持する行為は、商標法2条3項1号所定の「商品の包装に標章を付する行為」に当たらないものと解するのが相当である。」と判示した。
その上で、本件に於いては、被告が上記の電子データを外部会社から受領し、保持したからといって、2条3項1号所定の「商品の包装に標章を付する行為」ということはできないと判断した。
②について(商標法2条3項8号に基づく本件商標の使用の有無)
被告は、新商品の紹介等をする目的で、本件審判の請求登録日以前に情報誌の編集を開始していた。この情報誌には、上記パッケージデザインが印刷されていた。そして、当該請求登録日と同日に、各小売店に情報誌を発送していた。但し、各小売店に配達されたのは、請求登録日より後の5月30日であった。
本件では、この発送行為が2条3項8号に基づく本件商標の使用に該当するか否かが争われた。
この点に関し、先ず裁判所は、商標法2条3項8号所定の標章を付した広告等の「頒布」とは、「同号に並列して掲げられている「展示」及び「電磁的方法により提供する行為」と同視できる態様のもの、すなわち、標章を付した広告等が一般公衆による閲覧可能な状態に置かれることをいい、標章を付した広告等が一般公衆による閲覧可能な状態に置かれていない場合には、商標法2条3項8号所定の標章を付した広告の「頒布」に当たらないものと解するのが相当である。」と判示した。
その上で、本件に於いては、 「本件容器の写真が広告として掲載された本件情報誌が小売店に配達され、もって一般公衆による閲覧可能な状態に置かれたのは、平成21年5月1日である。したがって、被告が本件容器の広告写真が掲載された本件情報誌を頒布したのは、同日(平成21年5月1日)であるというべきであって、被告が前日(平成21年4月30日)に発送を行ったからといって、当該発送行為をもって本件商標を付した広告等の頒布に該当するとはいえない。」と判断した。
③について(商標法50条2項ただし書の「正当な理由」の有無)
「商標法50条2項ただし書にいう「正当な理由」とは、地震等の不可抗力によって生じた事由、第三者の故意又は過失によって生じた事由、法令による禁止等の公権力の発動に係る事由その他の商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の責めに帰することができない事由が発生したために、商標権者等において、登録商標をその指定商品又は指定役務について使用することができなかった場合をいうと解するのが相当である」と判示した上で、本件の上記の様な経緯においては、そのような不可抗力等の事由は、何ら認められないと判断した。
尚、平成22年(行ケ)第10013 平成22年12月15日判決も本件と同旨である。
(判決文) http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20101216100215.pdf