最高裁第三小法廷平成23年12月20日判決 ARIKA事件
・原判決破棄
・株式会社アリカ 対 株式会社ARICA
・商標法50条1項、2項、不使用取消審判
(経緯)
被上告人(一審原告)の株式会社アリカは,下記登録商標(指定役務35類、第4548297号)の商標権者である。
上告人(一審被告)の株式会社ARICAは、第35類中「広告,経営の診断及び指導,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,広告用具の貸与」について、不使用取消審判を請求した。
特許庁は、上記指定役務に関する取消審決をした。
これに不服の被上告人は、その取消を求めて知財高裁に訴えを提起した。知財高裁は、上記指定役務のいずれについても使用の事実の証明がないと判断した審決には誤りがあるとして、審決の取消しを判示した(知財高裁平成21年03月24日判決 平成20(行ケ)10414)。
本件は、知財高裁の原判決に不服の上告人がその取消しを求めて最高裁に上告した事案である。
(原判決)
原審では、本件登録商標について「商品の販売に関する情報の提供」のために使用していたか否かが争点となった。
知財高裁は、原告が、平成16年10月12日には本件商標を表示した原告のホームページに株式会社カプコンの販売する「ロックマンエグゼトランスミッション」「ストリートファイターEX plus α」の発売日,価格等を表示し,株式会社カプコンのホームページのゲームの購入画面等にリンクさせており、また、平成17年1月23日には、原告のホームページに本件商標を表示して、株式会社スーパースィープが製作,販売する音楽CDについての内容及び購入方法等を掲載していたと指摘。
本件商標の登録取消し審判の予告登録がされた平成19年4月4日より前3年以内に日本国内において、「商品の販売に関する情報の提供」の役務に関し本件商標を使用していたと判断した。その結果、被上告人の請求を認め、取消審決を取り消す判決をした。
(最高裁の判断)
最高裁は、先ず、商標法施行規則別表において定められた商品又は役務の意義について、以下の通り判示した。
「 商標登録出願は,商標の使用をする商品又は役務を,商標法施行令で定める商品及び役務の区分に従って指定してしなければならないとされているところ(商標法6条1項,2項),商標法施行令は,同区分を,「千九百六十七年七月十四日にストックホルムで及び千九百七十七年五月十三日にジュネーヴで改正され並びに千九百七十九年十月二日に修正された標章の登録のための商品及びサービスの国際分類に関する千九百五十七年六月十五日のニース協定」1条に規定する国際分類(以下,単に「国際分類」という。)に従って定めるとともに,各区分に,その属する商品又は役務の内容を理解するための目安となる名称を付し(同令1条,別表),商標法施行規則は,上記各区分に属する商品又は役務を,国際分類に即し,かつ,各区分内において更に細分類をして定めている(商標法施行令1条,商標法施行規則6条,別表)。また,特許庁は,商標登録出願の審査などに当たり商品又は役務の類否を検討する際の基準としてまとめている類似商品・役務審査基準において,互いに類似する商品又は役務を同一の類似群に属するものとして定めている。
そうすると,商標法施行規則別表において定められた商品又は役務の意義は,商標法施行令別表の区分に付された名称,商標法施行規則別表において当該区分に属するものとされた商品又は役務の内容や性質,国際分類を構成する類別表注釈において示された商品又は役務についての説明,類似商品・役務審査基準における類似群の同一性などを参酌して解釈するのが相当であるということができる。」
その上で、本件で問題となった第35類3に定める「商品の販売に関する情報の提供」の意義については、下記の通り判示した。
「政令別表第35類は,その名称を「広告,事業の管理又は運営及び事務処理」とするものであるところ,上記区分に属するものとされた省令別表第35類に定められた役務の内容や性質に加え,本件商標登録の出願時に用いられていた国際分類(第7版)を構成する類別表注釈が,第35類に属する役務について,「商業に従事する企業の運営若しくは管理に関する援助又は商業若しくは工業に従事する企業の事業若しくは商業機能の管理に関する援助を主たる目的とするもの」を含むとしていること,「商品の販売に関する情報の提供」は,省令別表第35類中の同区分に属する役務を1から11までに分類して定めているうちの3において,「経営の診断及び指導」,「市場調査」及び「ホテルの事業の管理」と並べて定められ,類似商品・役務審査基準においても,これらと同一の類似群に属するとされていることからすれば,「商品の販売に関する情報の提供」は,「経営の診断及び指導」,「市場調査」及び「ホテルの事業の管理」と同様に,商業等に従事する企業の管理,運営等を援助する性質を有する役務であるといえる。このことに,「商品の販売に関する情報の提供」という文言を併せて考慮すれば,省令別表第35類3に定める「商品の販売に関する情報の提供」とは,商業等に従事する企業に対して,その管理,運営等を援助するための情報を提供する役務であると解するのが相当である。そうすると,商業等に従事する企業に対し,商品の販売実績に関する情報,商品販売に係る統計分析に関する情報などを提供することがこれに該当すると解されるのであって,商品の最終需要者である消費者に対し商品を紹介することなどは,「商品の販売に関する情報の提供」には当たらないというべきである。」
本件各行為については、被上告人のウェブサイトにおいて,被上告人が開発したゲームソフトを紹介するのに併せて,他社の販売する本件各商品を消費者に対して紹介するものにすぎず,商業等に従事する企業に対して,その管理,運営等を援助するための情報を提供するものとはいえないとして、本件各行為は本件指定役務についての本件商標の使用ではないとした。
(判決文) http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20111220111305.pdf
最高裁第三小法廷平成23年12月20日判決 ARIKA事件
・原判決破棄
・株式会社アリカ 対 株式会社ARICA
・商標法50条1項、2項、不使用取消審判
(経緯)
被上告人(一審原告)の株式会社アリカは,下記登録商標(指定役務35類、第4548297号)の商標権者である。
上告人(一審被告)の株式会社ARICAは、第35類中「広告,経営の診断及び指導,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,広告用具の貸与」について、不使用取消審判を請求した。
特許庁は、上記指定役務に関する取消審決をした。
これに不服の被上告人は、その取消を求めて知財高裁に訴えを提起した。知財高裁は、上記指定役務のいずれについても使用の事実の証明がないと判断した審決には誤りがあるとして、審決の取消しを判示した(知財高裁平成21年03月24日判決 平成20(行ケ)10414)。
本件は、知財高裁の原判決に不服の上告人がその取消しを求めて最高裁に上告した事案である。
(原判決)
原審では、本件登録商標について「商品の販売に関する情報の提供」のために使用していたか否かが争点となった。
知財高裁は、原告が、平成16年10月12日には本件商標を表示した原告のホームページに株式会社カプコンの販売する「ロックマンエグゼトランスミッション」「ストリートファイターEX plus α」の発売日,価格等を表示し,株式会社カプコンのホームページのゲームの購入画面等にリンクさせており、また、平成17年1月23日には、原告のホームページに本件商標を表示して、株式会社スーパースィープが製作,販売する音楽CDについての内容及び購入方法等を掲載していたと指摘。
本件商標の登録取消し審判の予告登録がされた平成19年4月4日より前3年以内に日本国内において、「商品の販売に関する情報の提供」の役務に関し本件商標を使用していたと判断した。その結果、被上告人の請求を認め、取消審決を取り消す判決をした。
(最高裁の判断)
最高裁は、先ず、商標法施行規則別表において定められた商品又は役務の意義について、以下の通り判示した。
「 商標登録出願は,商標の使用をする商品又は役務を,商標法施行令で定める商品及び役務の区分に従って指定してしなければならないとされているところ(商標法6条1項,2項),商標法施行令は,同区分を,「千九百六十七年七月十四日にストックホルムで及び千九百七十七年五月十三日にジュネーヴで改正され並びに千九百七十九年十月二日に修正された標章の登録のための商品及びサービスの国際分類に関する千九百五十七年六月十五日のニース協定」1条に規定する国際分類(以下,単に「国際分類」という。)に従って定めるとともに,各区分に,その属する商品又は役務の内容を理解するための目安となる名称を付し(同令1条,別表),商標法施行規則は,上記各区分に属する商品又は役務を,国際分類に即し,かつ,各区分内において更に細分類をして定めている(商標法施行令1条,商標法施行規則6条,別表)。また,特許庁は,商標登録出願の審査などに当たり商品又は役務の類否を検討する際の基準としてまとめている類似商品・役務審査基準において,互いに類似する商品又は役務を同一の類似群に属するものとして定めている。
そうすると,商標法施行規則別表において定められた商品又は役務の意義は,商標法施行令別表の区分に付された名称,商標法施行規則別表において当該区分に属するものとされた商品又は役務の内容や性質,国際分類を構成する類別表注釈において示された商品又は役務についての説明,類似商品・役務審査基準における類似群の同一性などを参酌して解釈するのが相当であるということができる。」
その上で、本件で問題となった第35類3に定める「商品の販売に関する情報の提供」の意義については、下記の通り判示した。
「政令別表第35類は,その名称を「広告,事業の管理又は運営及び事務処理」とするものであるところ,上記区分に属するものとされた省令別表第35類に定められた役務の内容や性質に加え,本件商標登録の出願時に用いられていた国際分類(第7版)を構成する類別表注釈が,第35類に属する役務について,「商業に従事する企業の運営若しくは管理に関する援助又は商業若しくは工業に従事する企業の事業若しくは商業機能の管理に関する援助を主たる目的とするもの」を含むとしていること,「商品の販売に関する情報の提供」は,省令別表第35類中の同区分に属する役務を1から11までに分類して定めているうちの3において,「経営の診断及び指導」,「市場調査」及び「ホテルの事業の管理」と並べて定められ,類似商品・役務審査基準においても,これらと同一の類似群に属するとされていることからすれば,「商品の販売に関する情報の提供」は,「経営の診断及び指導」,「市場調査」及び「ホテルの事業の管理」と同様に,商業等に従事する企業の管理,運営等を援助する性質を有する役務であるといえる。このことに,「商品の販売に関する情報の提供」という文言を併せて考慮すれば,省令別表第35類3に定める「商品の販売に関する情報の提供」とは,商業等に従事する企業に対して,その管理,運営等を援助するための情報を提供する役務であると解するのが相当である。そうすると,商業等に従事する企業に対し,商品の販売実績に関する情報,商品販売に係る統計分析に関する情報などを提供することがこれに該当すると解されるのであって,商品の最終需要者である消費者に対し商品を紹介することなどは,「商品の販売に関する情報の提供」には当たらないというべきである。」
本件各行為については、被上告人のウェブサイトにおいて,被上告人が開発したゲームソフトを紹介するのに併せて,他社の販売する本件各商品を消費者に対して紹介するものにすぎず,商業等に従事する企業に対して,その管理,運営等を援助するための情報を提供するものとはいえないとして、本件各行為は本件指定役務についての本件商標の使用ではないとした。
(判決文) http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20111220111305.pdf